加圧式消火器から蓄圧式消火器へ移行した理由の記事が見当たりません。
そこで今回、記事にします。
加圧式消火器と蓄圧式消火器の違う点についても紹介します。
なお、消火器の使い方については、他のサイトに多く見られますので、そちらを参考にしてください。
この記事は
・消火器の方式による
安全性の違い
使い勝手の違い
使える環境の違い
・加圧式から蓄圧式へ移行した理由
を知りたい方におすすめです。
違いは、箇条書きで、項目ごとに対比します。
蓄圧式消火器と加圧式消火器の違い
蓄圧式消火器の特徴
①圧力源と操作性
本体容器に窒素ガス(又は圧縮空気)が蓄圧され、容器自体に圧力がかけられている
レバーの固さは加圧式の1/4
レバーを離せば放射が止まる
②安全性
本体容器が腐食し穴が空いても内圧が上昇するわけではなくガスが抜けるため、容器は破裂しない
③外観の違い
圧力計がある
④放射性
始めから終わりまで均一
⑤耐候性
圧力ガスが窒素ガスなので外気温の影響を受けず、本体容器内の圧力が変わらないため、酷寒地でも正常に放射できる
加圧式消火器の特徴
①圧力源と操作性
本体容器に炭酸ガス(二酸化炭素)ボンベが入っており、容器に圧力がかかっていない
ガスボンベをレバーを握ることで破るため力が要る
一度レバーを引くと放射が途中で止まらない
(例外として、レバーを離せば放射が止まる構造のものがある)
②安全性
本体容器の腐食に気づかずガスボンベを押し破ると、急激に内圧が掛かり容器が破裂する
③外観の違い
圧力計がない
④放射性
始めは急激で次第にダラダラと弱まる
⑤耐候性
圧力ガスが液化二酸化炭素ガスなので外気温の影響を受け、-10℃以下では放射力が低下する
加圧式から蓄圧式へ移行した理由
2009年頃から加圧式消火器の破裂事故が多発しはじめます。
事故を調査した国やメーカーは、加圧式には安全面などに問題があることを認識しました。
事故による死者は複数出ているので問題となり、一刻も早い対策が望まれました。
加圧式消火器に代わるものは蓄圧式消火器ですが、加圧式に比べて蓄圧式は価格が高く、当初はまだ現実的ではありませんでした。
しかし、加圧式消火器の破裂事故は待ってくれません。
蓄圧式消火器の需要増が見込めれば、メーカーは生産拡大に踏み切れるのですが、現状では採算が合いません。
そうした状況下、国は法整備を進めて、メーカーも企業努力を続け、世間の認知もあがりはじめます。
消火器メーカーは、蓄圧式消火器の生産量を増やし、コスト低減、家庭用としての価格設定も可能となりました。
そうした経緯があり、加圧式消火器から蓄圧式消火器へ移行できたのです。
現実的な問題をクリアできたことが、移行が進んだ大きな理由と言っていいと思います。
国と消火器メーカーの対応を年表で示します
2009年9月15日
大阪市の屋外駐車場で老朽化消火器の破裂事故が発生
その後、同様の事故が多発
2010年7月16日
消防庁の検討会で安全対策の報告書がまとめられた
製造:注意事項の表示義務、蓄圧式への切替え
流通:住宅用消火器の設置促進、蓄圧式の普及促進(コスト低減)
使用:消防機関による消火器の保守管理、取扱いの注意喚起
廃棄:老朽化消火器回収の仕組み構築
2010年9月13日
YP社は「より安全性の高い消火器への生産シフトについて」と題し報道発表
・設備投資を実施、2011年3月末までに蓄圧式の生産設備を増強
・月産20万本を目標
・お客様に蓄圧式が採用されるようコストダウンに努める
2010年12月22日公布(2011年1月1日施行)
・消火器の規格、点検基準等の改正
・2011年12月31日まで旧規格消火器の製造販売設置が可能
・2012年1月1日に旧規格消火器は型式失効
・2012年1月1日以降は、旧規格消火器の製造販売設置は不可
・既存の消火器は、特例として2021年12月31日まで設置が可能
ドラマ仕立ての物語り
20xx年 水面下ではメーカーの生存をかけた競争が始まっていました。
業界トップのYP社の勢いを止められるメーカーが無い状況が続いていたのです。
ナンバー2のH製作所は、加圧式では勝てないと判断し蓄圧式にシフトしたが苦戦が続きます。
※蓄圧式は生産コストが高く、安全性よりも値段が優先されたのです
しかしH製作所はあきらめず「加圧式と変わらない値段で販売できる消火器を開発しよう」と研究を続けました。
長い時を経て徐々に蓄圧式の良さに周りが気づき始めます。
折しも加圧式の破裂事故が多発します。
そこで国は法律を改正し、メーカーへ蓄圧式への切替えを要請しました。
斯くしてH製作所の販売数は増え努力が実ることとなります。
その後の流れです。
2012年5月14日
日本DC社がH製作所との業務提携を発表
2013年
全ての消火器メーカーが加圧式の製造中止を発表
※ただし、本体容器の改良や一部受注生産で加圧式消火器は存続している
まとめ
加圧式消火器の事故からはじまり、蓄圧式消火器へ移行した流れには、感動を覚えます。
国とメーカーが協力して、安全面に対応した姿勢は見倣うべきものでしょう。
おわりに
冒頭で「加圧式消火器から蓄圧式消火器へ移行した理由の記事が見当たらない」と述べました。
じつはこの記事を上げた理由はそれだけではありません。
加圧式を使用して問題ないかのような記事が見うけられます。
しかし、一般的な使用では、加圧式は避けるべきでしょう。
どうしても使う場合には、危険性を理解したうえでの使用が望まれます。
※薬剤の詰め替え作業のやりやすさから需要もあるため、加圧式消火器は存続している
自治体が設置している街頭消火器では、屋外設置のため腐食が進みやすいと言えます。
街にもよりますが、自治会と協力して交換時期になると蓄圧式消火器へ換えられます。
※点検間隔は、加圧式3年、蓄圧式5年です
いかがだったでしょうか。
蓄圧式消火器へ移行した経緯を中心の記事になったと思います。
筆者は、消火器使用等の指導をしています。参考としてくださればありがたいです。
なお、この記事のベースは10年程前に自身のために書いたもので、どこにも出しておらず、初めて出すものです。
知識として役立てていただけたら幸いです。